第1回 日本人デザイナーが存在感を示したミラノデザインウィーク2016

4月12日から17日までイタリア・ミラノで開催されたミラノサローネ国際家具見本市ならびにデザインウィーク(市内では一部11日から開催)は、日本人デザイナーの存在感が際立った一週間だった。

▲ nendoによるMDF Italiaのスツール「sag」。硬質ポリウレタンを一体成型にすることで、布が垂れたような表情をもたらしている。脚のアーチ構造によって力を巧みに分散。強度の面からも合理的なデザインを実現した。


深澤直人氏はB&B Italia、ドリアデ、グラス・イタリア、マジス、そして日本企業ではマルニ木工から新作を発表。nendoはカルテル、カッペリーニ、デパドバ、MDF Italia、大理石製家具のマルソット・エディッツイオーニ、フリードマン・ベンダ・ギャラリーからリリース。深澤直人氏のミラノ事務所を率い、今年自身の事務所を開設した武内経至氏もボッフィ、ポルトガルのコルクメーカー アモリム、アントリーニ、ヘンリティミから新たなプロダクトを発表した。

▲ nendoは、天然大理石のイタリア家具ブランド、マルソット・エディッツイオーニで「Light & Shadow」展の空間デザインを担当。自らの新作とともに過去のコレクションにも光を当てた。Photo by Takumi Ota

▲ nendoによる一方向に傾いたマルソット・エディッツイオーニ製のサイドテーブル「sway」。脚の重さによってテーブルはぴたりと安定し、大理石の重量がどこにいってしまったのかと思うような、彼ららしい造形だ。


深澤直人氏のデザインで注目したのは、フィエラ会場におけるマルニ木工の展示ブースのデザイン。天井高のある会場では、どうしても家具の周りに照明による影ができてしまうが、それを取り除くべく、建物の天井から随分と低い位置に白い布によるもう1つの天井をつくった。点だった光源を面に広げることで、家具が純粋に際立つ空間に仕立てていた。

▲ マルニ木工の展示ブース。深澤氏はマルニ木工からステンレスの脚と無垢材を組み合わせた“HIROSHIMA”スタッキングチェアとスツールを発表した。Photo by Nacása & Partners


その深澤直人氏のミラノオフィスのスタッフとして、イタリア企業とのプロジェクトをサポートしてきた武内経至氏。ポルトガルのコルクメーカー、アモリムから発表した「タパステーブル」は、無垢のコルクから天板と脚を削り出している。

▲ 武内経至氏による「TAPAS TABLE」。削り出しのためネジがなく、フラットパックを組み立てる仕組みだ。


そのほか吉岡徳仁氏、ミラノ在住の大城健作氏も多くの企業から製品を発表していた。2020年の東京オリンピックに向け、東京では大規模な建設プロジェクトが数多く進んでいる。海外の家具メーカーが、こうしたホテルやオフィスビルといった建築物件に参入するうえで、日本人デザイナーの起用は戦略的な意味を含めて、より増えていくのかもしれないと感じた。(文/長谷川香苗)