世界一のスマートターミナルを目指す、仁川国際空港第2ターミナル(前編)

このコラムでは以前にシンガポールのチャンギ国際空港を採り上げたが、そこと世界のハブ空港ランキングで上位を争ってきたのが、韓国はソウル近郊の仁川(インチョン)国際空港だ。かねてから建設中だった、その第2ターミナルが部分的にオープン(グランドオープニングは2018年8月18日を予定)し、たまたま仁川経由で韓国に出張する機会があったので、気ニナッタところを前後2回に分けて紹介したいと思う。実際には、もともと第1ターミナル着だった大韓航空の便が、出発の数日前にターミナル変更を伝えてきたという経緯があり、韓国としてもいち早く第2ターミナルを世界に向けてアピールしたい意向があるものと感じた。

さて、その仁川国際空港第2ターミナル(以下、第2ターミナル)は、ITやユニバーサルデザインの活用によって入出国にかかる時間を最小化し、空港内での待ち時間を楽しく有意義に過ごせることを念頭にプラニングされている。

例えば、チェックインや手荷物預けの自動化の推進により、20分以内の入国と29分59秒以内の出国を実現したとされ、韓国籍を持つ18歳以上の人であれば、事前登録なしに完全な無人環境で入出国を行うことも可能という(筆者の場合にはどちらも有人の処理だったが、大空港にしては比較的短時間で処理を終えたと記憶する)。さらに、幼児連れの親や70歳以上の高齢者には優先レーンも用意され、ほとんど並ばずにチェックを受ける人の姿があった。

その一方で、IT化以外のところでも、荷物カウンターの段差を30cmから10cmに下げ、スーツケースを持ち上げる際の負担を軽減したり、入出国ゲートをあえて2つに絞ることで待ち合わせ時のすれ違いを減らすといった細かい配慮もある。

出発階の中央には、長方形のアーティスティックな照明が吊り下げられ、刻々と変わるカラーによって旅行者の目を惹いていたが、近づいてみると、個々の発光ユニットがハングル文字になっており、幾何学的な文字の形状を巧みに利用したものだった。

その照明を挟んで、奥と手前のチェックインカウンターの前には、黒と白、色違いのメルセデス・ベンツのEQシリーズが展示されていた。同EQシリーズは、直噴ターボエンジンと高出力モーターを組み合わせたハイブリッドモデルであり、同社が掲げる「エレクトリック・モビリティ」のシンボル的存在だ。メルセデス・ベンツは、その多くの観光客やビジネスパーソンが行き交うこの場所こそが、新しいラインナップをアピールするに相応しいと考えたのだろう。

また、チェックインカウンターと出国口の間には、韓国の大手ベーカリーチェーンであるパリバゲットのカフェなど、緑や自然をイメージした店舗が設けられ、動線を巧みにとらえて利用者を誘う。「グリーン」「エコ」「スマート」は、第2ターミナルのテーマでもあり、施設全体の屋根がソーラーパネルで覆われ、地熱なども活用して、第1ターミナルとの比較で40%の省エネ化に成功している。

トラベルグッズショップのショーウィンドウもスペースに余裕を持たせた贅沢なつくりで、昇降するカラフルなスーツケースが目を楽しませてくれた。搭乗口までの通路にも免税店やモダンアートを思わせる展示があり、歩く人を飽きさせない。


駐機している航空機の情報をタッチディスプレイ上にAR的に映し出す案内板も置かれ、フライトスケジュールに変更がないかをリアルタイムで調べられるシステムがなかなか興味深かった。

なお、これは空港内では見かけなかったが、ソウルのデパートや公園などでポップアップストアを展開している「パーフェクト・アイス」のパッケージデザインが洒落ていたので、オマケ的にお見せしておきたい。透明の専用ペットボトルにつくりたてのソフトアイスを入れ、ミラーフィルムのスリーブを付けて渡すスタイルが特徴的で、デザインに力を入れる韓国らしい商品であった。

後編では、デジタル・アミューズメントパーク的な、第2ターミナルの「プロモーション・ゾーン」を紹介する。End