ものづくりが好きな人は見逃せない
ミュンヘンの美術館・博物館3選

▲Pinakothek der Moderne(ピナコテーク デア モデルネ )で開催されていた企画展「HELLA JONGERIUS & LOUISE SCHOUWENBERGーBEYOND THE NEW」の様子。

「観光」という感覚が乏しいためか、いわゆる名所旧跡に興味がなく、国内外問わず町歩きが中心になる。ただし、数少ない海外旅行の経験から、美術館や博物館はたいてい面白いと分かり、これだけは調べて行くことにしている。(ちなみに日本国内では、“民藝館”や“民俗資料館”があったら、行くことをお勧めする。どんなに小さな館でも、つくりものでない面白さがあるはずだ。 ただし、どちらも“民”と“館”がつくが、相互の関係はない。民藝館は柳宗悦の思想に基づいて集められ、民族資料館はその土地の民具を集めたものであることを、付け加えておく。)。

3月に、iF Design Awardの授賞式のために滞在したミュンヘンでは自由時間に3つの美術館・博物館を訪ねたが、いずれも素晴らしかった。「ミュンヘン、観光」のワードで検索して出てくる場所は、たいてい決まっているが、「私の観光トップ3」を紹介したい。

Pinakothek der Moderne(ピナコテーク デア モデルネ )

日本語のウェブサイトドイツのウェブサイト。私は日曜日に行ったので、1ユーロだった。これだけの素晴らしいものを1ユーロで見られるのは、なんとも贅沢な話。

Pinakothek der Moderne(ピナコテーク デア モデルネ ) は合わせて5つの館(Pinakotheke(新旧絵画館)、Museum Brandhorst(ブランドホルスト・ミュージアム)、Sammlung Schack(シャック・コレクション)から成り、それぞれの1日券や共通チケットなどもある。ウェブサイトによると「20世紀と21世紀の芸術、建築、デザインを集めた世界最大のミュージアムに数えられる」とか。

この美術館を検索すると出てくるのはほぼ、この場所だ。

たしかに、この場所に立つと、この展示の美しさ、ユニークさが伝わる。ただ、「これが展示のすべてなのかも?」と思ってしまうほど、この写真しか(私の検索能力では)出てこない。しかし実際の館内は、さながら三次元のデザインの教科書だ。

▲車もあります。

▲左:2000年頃、ミサワホーム総合研究所の学芸員 杣田佳穂さんから、このバウハウスのポットの写真を見せてもらい、研究の相談をされたことを思い出しました。まさか、実物が見られるとは……!右:クラシカルなデザインのものも。

▲ケトルや扇風機はオブジェのように並んでいる。

▲レッドアンドブルーではないリートフェルトに会えた。

▲Ernst Gamperlの作品。代々木上原のMDSGでガンペルの作品展を見たのも2000年。展示品は02年制作のもの。

企画展「HELLA JONGERIUS & LOUISE SCHOUWENBERGーBEYOND THE NEW」では、家具が横に倒されていた。普段は見られない、隠れた部分を見ることができ、デザイナーの小野里奈さんは「仕組みがわかる」と、大興奮していた。

▲左:ソットサスもイームズもお尻が丸見えの展示。 右:田中一光さんのポスターの展示の様子。

上記のデザインのエリア以外でも、企画展が充実している。訪れたときは偶然にも田中一光さんの「顔」のポスターを特集した企画展が開催されていた。そのほか、スケッチの特集も美しかったし、世界の都市を面白い視点で見る企画展「Does Permanence Matter? Ephemeral Urbanism」を見られたことも、収穫だった。

Deutsches Museum(ドイツ博物館)

公式ウェブサイト

技術・科学の国立博物館で、子どもがいろいろ体験できる場所になっているらしい、ということはわかったが、とにかく広い。オスカル・フォン・ミラーというドイツの技師が創立したそうだが、素晴らしい財産をつくってくれた、と極東から感謝したい。

帰国時間が迫ったわれわれは、「窯業・ガラス」などのフロアに急いだ。そこには、マニアックとしか言いようがない、細かい技術の説明が延々と続いていた。一般の人が「窯業」から思い浮かべるのは食器がほとんどだと思うが、産業規模から考えると、食器はごく一部だ。碍子(がいし)やレンガなども丁寧に説明し、模型も丁寧につくってある。この模型の規模が半端ではない。

▲製土の道具もしっかり展示してあった。ひとつひとつ細部まで気を遣ってつくられた素晴らしい模型が続く。

▲食器のつくり方も丁寧に細かく、立体で解説されている。

▲ガラスも細かく区分けして解説している。魔法瓶のなかにも使われているし、眼鏡もガラス。

▲左:ガラスの板製造などの模型はスケールが大きかった。 右:カミオカンデが、見られるとは!

一般的には飛行機などが有名な博物館ですが、ものづくりに興味のある人は、この3階だけでも見て欲しい。ミュージアムショップも充実している。

Bavarian National Museum(バイエルン国立博物館)

公式ウェブサイト

最後は正統派の美術館(博物館と訳されているが、私の感覚だと美術館)。コレクションされているものは、時代は中世からアールヌーボーまで。品は象牙、金銀、グラス、陶磁器、キリスト教美術、絵画、家具、楽器、彫刻、テキスタイル、時計と理化学道具、民俗、武器、と幅広い。

建物も素晴らしい。ものだけなく、空間あっての美術館だと感じさせる。
しかし、とにかく広く、つくりも複雑なので、侮っていると回りきれない。心して訪ねることをお勧めする。

▲宗教美術は荘厳な空気に包まれている。

▲これは医療器具のよう。なんとも優雅。

▲おもちゃも網羅している。

解説もせず、ただただ、「素敵を押し付ける」ような、お粗末なご紹介になったことを最後にお詫びする。しかし、そもそも美術館・博物館は実際に見ないと意味がない。この3カ所を見るために、もう一度、ミュンヘンに行きたいほど良かった。

今回は、ただただ素晴らしく、興奮して帰ってきてしまったが、いつか再度訪れたら、その時は、もう少し説明できるような見方をしたい。

前回のおまけ》

宮ノ下のお土産。
川邊光滎堂

こういうパッケージ、本当にすごい。