上海の運転事情。
みんなが回遊魚のような動きを見せる交差点

▲上海の街なかでクラクションを鳴らすのは禁止です。注意喚起のパッシングしかしてはいけません。Photos by Misa Nakata

「プップップップップーーーー!(クラクション)」

「コラァー!お前どこ見て走っとるんやァ!?」

この、クルマを運転しているときのシーンは、上海の話ではなくて、日本です。僕の日本の家は関西にあるので、クルマで走っているときにもし無理やり割り込んだら、このような揉め事が起こることが稀にあります。しかし上海ではほぼ起こりません。

なぜか? 上海のクルマはみな回遊魚のように走る、というのが僕のイメージです。

もれなく全員が先に進みたい。隙間があったら割り込んで先に行くのは当然許されること。他の人も前にどんどん出てくるのは、自分と同じだから仕方がないこと。何よりぶつかるのは嫌だし、警察に捕まるのも嫌だし。揉めてる暇があったら揉めないようにして先に進みたい。そういう総意が回遊魚のような動きを生み出します。

▲回遊魚のようにするりするりと全体が流れていくのが中国スタイルです。清掃車のトゥクトゥクもどんどん攻めています。

ケーススタディをふたつほど挙げますと。

まずひとつ目。割り込みを仕掛ける場合。

日本だと上記したようなクラクションと罵声モードに突入することがありますが、上海では……(Aさん:割り込みしたい人。Bさん:割り込まれそうな人)。

Aさん:(隙間を見つけて)入ろっと(ごく自然体で自分のクルマの頭を突っ込んでいく)
Bさん:え?俺の方が先やで~(ぐぐぐぐっと前のクルマとの隙間を詰めていく)
Aさん:いける(さらにそーっと詰める)
Bさん:いける(でも一瞬のたじろぎ)
Aさん:(その間合いを読んで)われ先で(ぐいっと突入)
Bさん:(ふっとアクセル戻す)仕方ない(そして自然体に走る、割り込まれたことを何も気にしない)
……ということが一瞬のやり取りで行われます。それもあちこちで常に繰り広げられているので、隙間なく、どんどんクルマが前に進むようになります。

また、交差点での状況はかなり日本と異なります。

日本では青信号のとき、また信号がなくても、優先道路から交差点に進入する場合は、基本的に何も飛び出してこないだろうという前提ですぱっと走り抜きますが、一方で中国はいつ何時何がどこから飛び出してくるかわからないことを前提に走るのでスピードが一旦落ちます。

言い換えると、青信号の交差点に入るときにアクセルに足を置いているのが日本で、アクセルから足を外してブレーキに足を乗せているのが中国です。交差点での強烈な衝突事故を中国で見ないのは、そういう感覚が全体的にあるからだと思います。

▲カメラの数がすごく多く、割り込みなどがしっかり撮影され、後から罰金がきます。

以前のブログで、中国の人はわれ先に前へ前へ進んでいくので地下鉄などは混雑して大変だ、ということを言いましたが、クルマの運転ではそれがプラスに働いて全体がひとつの動物のように一体感のある動きとなり、この感覚に慣れれば日本より安全、というのがこちらに住む日本人の意見です。

そして、国の安全運転に対するフォローも緻密です。

上海の街中ではクラクションを鳴らすと音を見張るセンサーとカメラがあるようで、後ですかさず違反キップを切られます。また、急激な角度での割り込みもそれを写真に撮られて捕まるそうです。なので大変マナーが良くなっていて、一昔前の「中国はクルマのクラクションだらけ」の感覚で来られた出張者は驚きます。また高速道路も余りにカメラが多いので、スピードを出す暇がなく、みな最高速度120km/h以内でするすると走ります。

今回はデザインの話とは全く違うのですが、この感覚は中国社会の全体感をつかむ意味で参考になるのではと思います。もしどなたか、回遊魚の動態観察と上海のクルマの動態観察の比較を研究されるのでしたら、ぜひ結果をお知らせください!End