アフターコロナを思い描きながらもなかなか先が見えない状況が続き、再びおうち時間が増えていますが、いかがお過ごしですか? 家に籠ることにも慣れてきて、いろいろな楽しみ方を見出しているなかで、想像を楽しむものが増えていると感じています。例えば、「聴く本」と言われているオーディオブックや、会話・音声のみで交流するSNSサービスのClubhouseは、音から想像するコンテンツとして注目を集めていますし、音楽業界では小説を音楽にするYOASOBIやAdoなど、歌っている人物を見せずに歌の世界観に没入させる新しいタイプのミュージックビデオが登場してきています。また、絵本の世界でも「えがないえほん」や「かんじるえ」という今までとは異なる解釈の絵本が話題になるなど、想像を楽しませるコンテンツが生活の一部になりつつあります。
では、なぜ想像は楽しいのでしょうか? 絵本を例に体感してみたいと思います。
「えがないえほん」は、その名のとおり絵本なのに文字しかありません。その文字もストーリーではなく、大人が言わないような言葉や音を表す言葉で構成されています。ルールは「声に出して読むこと」。それだけです。
なっとうのみそしる? ほんにゃまんかぺー?
一瞬、頭の中が???となってしまいますが、想像は膨らみます。頭の中身がなっとうのみそしるってどういう状態? ほんにゃまんかぺーって、どんなときに使う言葉? 普段は考えもしないことがこの本によって想像させられ、凝り固まった頭が解されるような感覚も味わうことができます。
次は「かんじるえ」という絵本です。こちらは絵がすべて漢字だけで描かれた本なのですが、ストーリーはなく、絵と関連する漢字からさまざまなことが感じ取れるようになっています。
ある夏の日、海水浴に出かけた男の子は浜辺で貝を見つけたようです。見つけた貝は何だったのでしょうか? よく見ても、貝のフォルムは曖昧で名前を特定するような情報は一切ありません。その貝の正体はあさり? しじみ? それともハマグリ? そんなふうに想像しながら読むことができます。
想像の中でのストーリーは人によって異なるので解釈が何通りにも広がります。感想を言い合うことで新しい世界が広がり、前回とは違った解釈を求めて何度も何度もリピートさせるゲームのような魅力もあります。正解がひとつではない時代において、想像し考えたことを声に出して言い合うことは、新しい価値を生み出していく上で必要なコミュニケーション手段だと感じました。
私たちも、想像を掻き立てる魅力を持ったコンテンツを創り出し、活発にコミュニケーションを取っていきたいと思います。