▲金属活字

三省堂は、「書体」という概念が生まれた黎明期に奔走したひとびとの記録をつづった書籍「『書体』が生まれる　ベントンと三省堂がひらいた文字デザイン」を2021年8月27日（金）に発売する。

同書は、三省堂辞書サイト「Word-Wise Web」の連載コラムを書籍化したもの。活版印刷の時代は、金属活字を一本一本組み上げてレイアウト（組版）していたが、本一冊となれば、何万字分の活字を拾い、組み上げて印刷することになる。

そんな金属活字の時代では、印刷にもちいられる書体は最初、「種字彫刻師」というごく限られた天才の頭のなかにのみあるものだったという。当時、活字のおおもととなる種字は、職人がマッチ棒ほどの小さな活字材に原寸・逆字で手彫りしており、その仕事は難易度のとても高かったそうだ。

やがて、紙に拡大サイズの正字（そのままの向き）で描いて書体デザインをおこなえるようになる。現代にもつながるこうした文字デザインの手法が現れた背景には、「ベントン」と呼ばれるアメリカ生まれの機械の導入と、かつての手彫り種字の良さを引き継ぎながら、新たな文字デザインの手法を切りひらき、新しい機械を使いこなして美しい文字をつくろうと奔走したひとびとの存在があった。

きっかけをつくったのが三省堂だ。その現場には、どんなひとたちがいて、どんなふうに書体づくりに取り組んでいたのか。どんなひとたちが未知の機械を手に入れ、その技術をひろげていったのか。

今回の書籍化にあたり、新資料によりわかったことや書き下ろし、多数の写真を加えて再構成。「書体」が生まれる現場の奮闘をたどることができるだろう。