水槽内でサンゴ礁生態系の再現に取り組む
東大発の環境移送ベンチャー「イノカ」

サンゴ礁は、海の表面積としては0.2%しかないが、サンゴ礁海域には海洋生物種のうち約25%(約10万種)が生息しているとされる。また、護岸効果や漁場、建築材料や生活の道具の材料などを提供し、近年では医薬品への活用も期待されているという。

しかし、20年後には気候変動に伴う海水温の上昇により、サンゴ礁の70~90%が消滅する可能性があると言われている。それゆえ、海の生物多様性やそこからうまれる経済価値を持続可能にしていく上で、サンゴ礁生態系の保全は世界的に喫緊の課題となっている。

そこで、東大発のベンチャー企業のイノカは、AI・IoTを活用した独自の「環境移送技術」によるサンゴ礁生態系の水槽内での再現に取り組んでいる。

▲東京工業大学 中村隆志研究室の顕微鏡にて撮影

2022年2月には、時期をコントロールしたサンゴ(エダコモンサンゴ)の人工産卵実験に世界で初めて成功。日本では毎年6月にだけ産卵するサンゴを真冬に産卵させることで、年に1度しか研究できなかったサンゴの卵・幼生の研究がいつでも可能になるそうだ。

▲産卵中のエダコモンサンゴ

▲サンゴ産卵確認・撮影中のCOO竹内、CEO高倉、CAO増田

▲産卵実験に使用した水槽

▲イノカオフィス 水槽

また、同社は、生物多様性のなかでも「海洋生態系」の保全を推進するために、「自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)」のフォーラムメンバーに参画。

同社の環境移送技術により、自然環境を閉鎖系(水槽内)にモデル化して再現することで、自然界ではデータ収集が困難とされてきた環境データの継続的なモニタリングを実現し、企業活動のケースやエリアごとに周辺の水環境をモデル化して、影響等を個別具体的に評価・解析するなど、科学的な定量評価のレポーティングを目指すとしている。End