ラハティ国際ポスタートリエンナーレ2025
グランプリを受賞したゑ藤隆弘「実験・探求の場としてのポスター」

ゑ藤隆弘《Repetition and life: bud, P2424》、2024

グラフィックデザイナーのゑ藤隆弘(STUDY LLC.代表)は、フィンランド・ラハティで開催された世界五大ポスターコンペティションのひとつ、「ラハティ国際ポスタートリエンナーレ2025」にてグランプリを受賞した。同氏は2022年大会でもグランプリを受賞しており、2大会連続の快挙となる。

同コンペティションは、1975年にビエンナーレとして創設され、日本人ではこれまでに亀倉雄策、サイトウマコト、横尾忠則らがグランプリを受賞している。2014年からはトリエンナーレに変更。創設50周年の節目にあたる2025年は、世界各国から約4,000点の応募が寄せられた。

ゑ藤にとって、ポスターとはグラフィックデザインの本質を凝縮して考えられる場、いわば実験・探求のフィールドである。とくに今回の作品のような「仕組みによって絵を描く」というアプローチは、そのままVIやサイン計画といった実務への接続が可能であり、自主制作とクライアントワークの間で、相互に良いフィードバックが生まれていると語る。

ゑ藤隆弘《Between Symbols and Illustrations_Summer morning》、2018(前回のグランプリ受賞作品)

前回の受賞作品「Between Symbols and Illustrations_Summer morning」では、抽象化の過程で失われてしまう細部である「髪の毛」を部分的に細密に描写。記号の明快さと細部の豊かさを対比させつつ、情報伝達のための記号を自律的な存在へと昇華させることを試みた。

How a Poster Begins to Dance ポスターの構成と運動の生成

今回の受賞作「Repetition and life: bud, P2424」は、同じ絵柄のポスターを3度繰り返して構成したもの。シンプルでありながらも、二次元と三次元を横断するような視覚言語を探究し、見る者に視覚的・身体的な体験をもたらすインタラクティブな表現を目指した。

同作について国際審査員団は、「空間構成は精緻で、構造は動的でありながら、奥行きや多層的な意味の開示においては繊細な表情を見せます。ネガティブスペースと隠された距離感の相互作用がリズムと動きを生み出し、テーマである“DANCE”の本質を響かせています。このポスターは単なる視覚的な主張にとどまらず、テーマに内包された生命力や流動性を体現しながら、明確なメッセージを伝えています」と高く評価している。End