Zaha Hadid Architectsが設計を手がけた
西シドニー国際空港が完成

Photo by Trevor Mein

オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の新空港「西シドニー国際空港(Western Sydney International Airport)」の建設工事がこのほど完了した。同国で50年以上ぶりに建設された主要空港で、シドニー郊外のバジェリーズ・クリークに位置する。24時間運用可能な空港として、同国の経済発展を促すことが期待されている。

Photo by Brett Boardman

同空港は、Zaha Hadid Architectsと地元のCOX Architectureが初期設計を手がけ、MultiplexWoods Bagotが設計・施工を担当。ターミナルのデザインは、シドニーがあるカンバーランド平原の広大な地平線からインスピレーションを得ており、この地域の自然の美しさを取り込んだ、周囲の景観に調和するフラットな建築が特徴である。

Photo by Multiplex

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Photo by Trevor Mein

ターミナルを象徴する彫刻的な波打つ天井は、オーストラリアの森に広がるユーカリの木から剥がれ落ちる樹皮を思わせる。天窓からは柔らかい自然光がふんだんに差し込み、大きな開口部がターミナルの透明性を高めている。

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「オーストラリア独自の体験を象徴する『Great Australian Light(偉大なるオーストラリアの光)』は、私たちのデザイン思考の中心にあります」と語るのは、COX ArchitectureのプリンシパルでデザインリードのDavid Holm。「ターミナルに差し込む光は、人々の動きや方向性、さらには感情さえも導き、静けさと明瞭さ、そしてつながりを生み出します。多くの人にとって、この空港がオーストラリアとの出会いの場になります。だからこそ、地域に根ざした体験を提供することを目指しました」。

Photo by Trevor Mein

Photo by Brett Boardman

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さらに、西シドニーは、オーストラリアでもっとも文化的な多様性がある地域のひとつであることから、ターミナルのデザインについては、先住民族・ダルグ族の組織「Dharug Custodians」と協議を重ね、先住民族のコンサルタント会社「Murawin」とも協力。地域で受け継がれているナラティブを落とし込み、開けた視界や温かみのある素材、屋内外をシームレスにつなぐ空間といった、平等の精神と地域の価値観を体現するターミナルをつくり上げた。

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また、ターミナルは、自然換気やエネルギー効率、水リサイクルなどのリジェネラティブ・デザインを取り入れることで、環境性能認証「Green Star」で最高水準の5スターを獲得。モジュール設計により、運用効率を維持しながら段階的な拡張を行うこともでき、将来的な技術発展や乗客のニーズにも柔軟に対応可能だとしている。End