【10/1まで】「日本の道具3」
見逃せない作家を一挙紹介!

今週末まで開催の「日本の道具3」。

9月1日からリビング・モティーフで始まった「日本の道具3」展も大詰めだ。 
日本の作家・工房のモノが並ぶ、というのは、リビング・モティーフがオープンした1980年代は考えられなかったことじゃないだろうか。今では海外でつくられたキリッとしたアイテムに、揺らぎのある日本のモノづくりがエッセンスとしてしっかりと加わっている。

民藝で知られる濱田庄司が自分の書斎にイームズの椅子を組み合わせたのを見て、「カッコイイけれど、こんなことはセンスの好い人しかできない」と思ったものだが、それから50年。今は、普通に生活をしている人が、その組み合わせを自然にできるようになっている。濱田のセンスの良さと、今の人々の吸収の良さ、その両方に驚きを感じる。

さて、今回の「日本の道具3」に参加したつくり手は、この連載でも紹介した高山でガラスを作る安土草多さん、岩手で鉄をつくる小笠原鋳造所、長野で木工を営む鈴木努さん以外もみな魅力たっぷり。駆け足ですが、ここで一挙にご紹介。

♦︎廣瀬慎さん

▲ハンドル1個とミニフライパン2個のセット(木蓋は別売)。

廣瀬さんに初めてお目にかかったのは私の会社員時代だから、25年以上前にも遡る。その頃から、全然変わらぬ、快活な方だ。流れるような線の鍋や鍋敷きのかたちは、料理をしない男性も、思わず手に取りたくなるかっこよさ。写真のハンディパンのハンドルの構造は、安定性とデザインを両立させている。ハンドルの2カ所に付いた出っ張りが、押さえる役割と支える役割となり、熱い鍋も安心して持てる。

♦︎山本忠正さん

伊賀の「やまほん陶房」の2代目として、工場を仕切りつつ、作家活動もしている山本さん。
本人は料理も上手。持ち手がないかたちは、洗いやすく、持ちやすい。それは、使いやすさに通じる。決して派手ではないが、料理を引き立てる鍋が、今回も店頭に並んでいる。

♦︎西石垣友里子さん

▲コンバンワ皿、と名付けられたお皿。毎晩、登場させたい。

沖縄で、センダン、タブ、ヤマグルチといった沖縄の木を使い日常使いの器をつくる、西石垣さん。ざっくりと彫り上げた大きめのお皿の表情からは「木を彫るのが大好き」という西石垣さんの気持ちが溢れている。
オイル仕上げの木は使うのを躊躇する方もいるが、サラダでも肉料理でも、怖がらず、ざっくり使ってほしい。

♦︎宮﨑珠太郎さん

▲常に手を動かし、何かつくられています。

工業試験場に勤められていた方で、伝統工芸、クラフト、デザイン、行政、いろいろな世界をまたにかけて、85歳の今も現役の竹のクラフトマンだ。「ねじり編み盛り籠」(※写真)は、50年もの間つくり続けられている、宮﨑さんの代表作。

真竹の象牙色と、長野からわざわざ取り寄せた根曲がり竹の野性味のコントラストが、絶妙な銘品。実際に手にとって、竹のねじりの美しさ、しっかりとした重さを感じでいただきたい。

♦︎弥生陶苑

▲浅めが特徴の「グリルパン」。なかなかかっこいいデザイン。蓋付の鍋は、IHが使えるプレートも備えている。

土鍋の産地、三重県・四日市の工房。動力ろくろや圧力鋳込みという機械を使い、良質な土鍋を、値ごろにつくってくれている。奥様が鍋に合わせて開発したレシピは、鍋をお買い上げの方にもれなくついている。

♦︎conte

ステンレスの工場が集まる、新潟県・燕の技術を駆使してつくられた、キッチンツール。主婦でもあるデザイナーの小野里奈さんのこだわりを、燕の職人の連携プレーで完成させた。

通常の二倍の板厚のステンレスを使っているため、安定感が良く、切りっぱなしの縁も厚みがあるので痛くない。そして、汁切れも良い。ボウルと、蓋になる、トレイ、ザルとセットで、台所の利便性がアップする道具だ。

♦︎水野正美さん

人気のため常に鍋は2年待ち、という水野正美さん。やはり鍋類は最初に売り切れてしまったが、カトラリーは追加でつくってくれた。手で1つずつ叩いたカトラリーの触感は、プレスのものとはひと味違う。

♦︎長田佳子さん

「練りこみ」という技法で、小品ながら、新鮮で魅力あるものをつくってくれている長田さん。今回は、薬味皿、薬味サジ、箸置きにアイスクリームスプーンなど、食卓の脇役ながら、「ほっ」と一息つけるものを、何度も窯を焚き、追加してくれた。育児休暇から復帰して「つくるのが楽しくてたまらない」気持ちが納品された作品の量から伝わってくるようだ。

箸置き入れとしてつくられた銀の箱は、使い込むとこのようになるので経年変化も楽しんでもらいたい。

♦︎下山普行さん

山形で錫を中心にした鍛金の作品をつくっている。設計にも関わる仕事も多く、工房には大きな工具も揃っている。

大人気の箸置き。最後の最後まで店頭に商品を追加してくれている。

♦︎稲葉直人さん

伊賀で、土鍋をストイックにつくり続けている。大胆な色合の鍋はすべて手描き。見た目だけでなく、ろくろで薄く挽いた鍋は、見た目より軽く扱いやすい。持ちやすい蓋の持ち手もさまざまなので、ぜひ、持ち比べていただきたい。

秋をさらに楽しむために。

3回目の開催となった「日本の道具」。1回目が8月、2回目が6月、そして今回が9月。季節により、さまざまな道具を使いこなす日本人の贅沢さを実感し、私は選ぶ立場から毎回楽しんだ。

土鍋や鉄鍋、竹に木……と、自然素材のものは、錆びたり、割れたり、朽ちたり、扱いにくさもありますが、使いこなせばこっちのもの。ぜひこれらを使って、読者の方々にも美味しい秋を過ごしてほしい。

生誕130年 バーナード・リーチと小鹿田焼展

おすすめの展示会です。行かれた際には仕事抜きで会いに行く人と、捨てられないカレンダーで紹介したシネマテーク・リベルテにもぜひお立ち寄りください。

会期
9月26日(火)~10月18日(水)
会場
天領日田資料館(日田市豆田町11-7)