今年で6回目「日本の道具展」に登場する作り手を紹介します【後編】
クラフト・ユー(新潟)|鈴木茂兵衛商店(茨城)|南景製陶園(三重)など

10月8日より、東京・六本木のリビング・モティーフにてスタートした、6回目となる「日本の道具展」は11月10日(火)にて終了。駆け込みですが、作り手紹介を続ける。

クラフト・ユー(新潟)

新潟県柏崎市で耐熱ガラスの工房を営む、クラフト・ユー

代表の徳間保則は、東京の耐熱ガラスのメーカーで営業を勤めたのち、自ら作り手になるべく退社。工場規模ではなく工房規模で作る方法を、作り手を訪ねては研究を重ねたそう。温度差に強いホウケイ酸ガラス管をバーナーで加工する工房には、太いガラス管をガッツリ掴む特注の機械がいくつも並ぶ。管の温まり方にムラが出ると歪みができ、割れる可能性があるため、経験をもとに加減を見ながら細心の注意を払い、熱さと戦いながら作業する。見学しているこちらは、かなりの距離を保っているのに、それでも熱く、後ろにのけぞるほど。

クラフト・ユーの自慢は、液体の切れの良さ。紆余曲折、試した結果、形となった注ぎ口。ストレーナーもガラスで作るこだわりに、文句のつけようはなかったが、おっちょこちょいの筆者が、うっかりし蓋を落とさぬように、今回は特注で蓋を深くするというわがままをきいてもらった。(電子レンジ、オーブン、蒸し器、食器洗い機にも使える。)

▲独自の機械で、手作業では扱えない太い管を掴むことで、1リットルのポットも作ることができる。

▲photo Tomoko Osada
美しいポット。紅茶用にはジャンピングができるようにステンレスストレーナー付き。ハーブティー用は茶殻を楽に捨てられるように、ガラスストレーナーという心遣い。

鈴木茂兵衛商店(茨城)

提灯といえば、岐阜提灯、熊本の八女提灯、そして水戸の水府提灯。蝋燭から電気に変わっても、和紙に揺れる灯は住まいに潤いを与えてくれる。

慶應元年から提灯を作っているという「鈴木茂兵衛商店」。伝統的な提灯を作っていたが、今回紹介するのは、7代目の当代鈴木隆太郎さんがビジュアルアーテイストのミック・イタヤさんと同級生だったという縁で、スタートした「MICシリーズ」。ミックさんの創造力からなる膨大なシリーズから、今回は、代表作「とり」と「あきのくも」を展示販売している。

▲制作風景 熟練の職人が製作している。ぜひ、どんな人た作っているか、見て欲しい。詳細はこちらにて。

▲パッケージも可愛い。ギフトにも持ってこい。

南景製陶園(三重)

リビング・モティーフで、急須や湯呑み・茶托を定番で扱っている三重県、四日市の「南景製陶園」。

伝統的工芸品に指定されている「萬古焼」だが、お茶好きが「急須は萬古に限る」と言い切るその理由は、土と還元焼成(酸欠状態で焼く)だと言われている。煎茶はうがいに使われるほどだから、洗剤は付けずにそのまま洗う。お茶だけを淹れ続けることで、さらにおいしく淹れられる、ということだ。

今回は、南景製陶園の原点回帰ともいえる、「大正焼」で使われていた白練の急須や湯呑みもご用意させて頂いた。

▲photo Tomoko Osada
元々は製土業をしていた強みから、今回は貫入の入った渋いバリエーションの皿も揃えている。

▲熟練の職人がひとつひとつ丁寧に仕上げている。

高田耕造商店(和歌山)

こちらも定番で取り扱いのある、「高田耕造商店」。最近は、ラインナップも広がって、箒やちり取りも。小箒の<黒竹>は入手が困難になっているため、残念ながら今回限りのお取り扱いとなりそう。

ちなみに、高田耕商店は、一度は壊滅してしまった国産棕梠産業を立て直した立役者。今回、輸入材のものも取り扱っているが、国産に遜色がないほど厳選しているので、ご安心を。

▲photo Tomoko Osada
一度、在庫が減りましたが、再度、入荷しています。

三陶(三重)

今回のイメージ写真の中心を飾った楕円の鍋。「鍋は冬」「鍋は丸」という思い込みを覆す土鍋が三重県・四日市の「三陶」から到着している。

先にご紹介した急須も萬古焼だが、土鍋も有名。その全国シェアは9割とも言われている。その強みとなっているのは「ペタライト」と呼ばれる鉱物。もともと、釉薬に使われていたこの鉱物を土に混ぜたことで、耐熱性がより強くなり、調理の際の扱いが格段に楽になり、萬古の土鍋が全国に普及する要因となった。また、この開発者は、萬古焼の業界の盛り上げのため、特許の申請をせずに、誰でも使えるようにした、というエピソードも残っている。

デザインしたのは、ステンレスボウル「conte」のデザインを担当した小野里奈さん。オーブン料理が好きな小野さんが、長方形のオーブンに効率よく入れるには、楕円がいいのでは…と、図面を引いた。主婦として、洗う手間も避けたい、と角が少なく、洗いやすい形も嬉しい。外径は同じで、深さが3つ。1.2リットル、1.5リットル、2リットル。人数や料理に応じて鍋の身だけ(身だけもお取り寄せ可)複数揃えても良い。使い始めは、米の研ぎ汁または、小麦粉か片栗粉を溶いた水を入れて、煮立たせる「目止め」は、忘れずに。鍋と同じ土で作ったボウルも耐熱。同じく目止めをして使い始め、オーブン、直火、電子レンジOKだ。

以下、料理のデモンストレーション。料理はminokamoの長尾明子さん、解説は小野里奈さん。

▲photo Akiko Nagao
浅型のお鍋は、お肉のソテーやオーブン料理にも使えます。弱火でじっくり火を通すことでふっくらした仕上がりに。

▲photo Akiko Nagao
シチューやポトフなどの煮込み料理には深型の土鍋を。和洋問わず、いろいろなお料理にお使いください。

▲photo Akiko Nagao
土鍋の中にキャベツやもやしを敷き詰めて、その上に季節の野菜お肉を乗せた蒸し料理。キッチンのコンロで調理して、鍋のまま食卓に。

クラフト工房・木奏(北海道)

北海道の木工クラフトの町、置戸町でカトラリー専門の一人親方として、日々、使いやすいカトラリーを作る、「クラフト工房・木奏」の西村延恵さん。

隣の家まで、車でいくほどの距離の場所に住む西村さんは、ほぼ365日、家で食事をする生活。自ら作ったカトラリーは自らが一番の厳しいモニター。さらに、友人やお客さんの意見も真摯に受け止め、日夜、使いやすいカトラリーを作り続けている。実際、こだわりの飲食店でパスタフォークやレンゲが使われていることが、彼女の実力を示している。

▲カトラリー専門だったが、自分用に作ったという調理へらも抜群に使いやすい。

一景舎

「世の中、情報が多すぎる」と、出自を隠して籠編みをする作り手。「くるみの立木をそのまま表現したい」という圧巻の籠。ぜひ、一人でも多くの人に直接ご覧頂きたい。

佐野猛、佐野曜子(富山)

最後を飾るのはGlass Studio SANOSANOの佐野猛さんと佐野曜子さん。

今回、コロナの影響を考慮し、お邪魔することは遠慮しました。10年前にお邪魔した時の工房写真を探し出せず、残念ながら工房写真は無いが、文句なしで素晴らしい作品は、余分な情報を入れずに、まずはその美しさを感じて欲しい。

▲上が佐野猛さん、下が佐野曜子さんの作品。それぞれの個性は、まさに今回のテーマ「暮らしの景色をつくるもの」だ。

なお、今回紹介した工房・作家さんは過去の投稿でもご紹介しています。詳細は下記リンクより。
青竹工房桐山
IWATEMO
conte 
柴田慶信商店
早川勝利


前回のおまけ。

建築家・中村好文が設計した小田原の「うつわ 菜の花」さん。中庭が本当に素敵なギャラリーだ。End